第13回 「聖書入門ーキーワードで読む」
第十三回 新生(regereration,παλιγγενεσία,パリゲネシア)
「新生のギリシャ語」
この新生(παλaιγγενεσία,パリゲネシア)というギリシャ語は、πἀλιν(再び)とγἐνεσις(生まれる)から成っており、「新約聖書ギリシャ語小辞典」では、「キリストによって新しいいのちが生まれること」と説明されています。このギリシャ語は、テトス3章5節に使用されています。
「神は、私たちが行った義のわざによってではなく、ご自分のあわれみのゆえに、聖霊による、新生と更新との洗いをもって私たちを救ってくださいました。」(新改訳第二版)
新改訳聖書2017は、パリゲネシアを文字通り「再生」と言語に忠実に訳していますが、私見によれば、内容に即して「新生」がわかりやすいと思います。なぜなら「再生」ということばで、日本人の中には輪廻転生を想起する人が多いからです。
「新しく生まれる、new born」
聖書では、新生を表現する際に別のギリシャ語を用いている箇所があります。それは新しい(καινός、カイノス)という形容詞をつけて、新しくうまれた者を表しています。英語ではよく知られているnew bornです。
最も有名な聖句は以下の通りです。
「ですから、だれでもキリストのうちにあるなら、その人は新しく造られた者(καίνη κτίσις、new creature)です。古いものは過ぎ去って、見よ、すべてが新しくなりました。」(Ⅱコリントの手紙5:17)
ちなみに、新しいというギリシャ語には二つあり、カイノス(καινὀς)は質的に新しいことを意味し、ネオス(νέος)は時間的にあたらしいことを意味します。ほかにもカイノスは、「新しい契約」(Ⅰコリント11:25)や「新しい天と地」(Ⅱペテロの手紙3:13)で用いられています。
「ニコデモへのイエスの言葉」
最後に、イエスが語られたニコデモへの有名な言葉を考えみましょう。ニコデモはパリサイ人で、ユダヤ人議会のメンバーであったにもかかわらず、イエスのもとを訪ねました。イエスは、ニコデモに「まことに、まことにあなたに言います。人は、新しく生まれなければ、神の国を見ることはできません、」(ヨハネの福音書3:3)と語られました。また新しく生まれる方法について、「まことに、まことに、あなたに言います。人は水と御霊によって生まれなければ、神の国に入ることはできません。」(同、3:5)と話されました。ここで「新しく生まれる」というギリシャ語には「上から」(ἀ’νωθεν,アノーセン)生まれるというギリシャ語が用いられています。人間の努力によってではなく、ただ神の御力によって新しく生まれるという意味が込められています。水と御霊によって生まれるとは、水が象徴する神のみことばと聖霊の働きによって人は、新生できるのです。
ニコデモは、イエスが語られる真意が理解できませんでした。ですから彼は、「人は、老いていながら、どうやって生まれることができますか。もう一度、母の胎に入って生まれることなどできるでしょうか。」というちんぷんかんぷんな質問をしています。
「新生の重要性」
新しく生まれ新生することは、イエス・キリストを信じ、こころに受け入れた結果として生じます。努力して努力して自分を変えようとするのではなく、上からの神の働きによって新しい者としてつくりかえられるのです。アダムとエバが堕落し、人間が罪の性質を以て神に反逆しはじめてから、神は聖霊による再創造のみわざをなし続けておられます。
「聖書の言葉」
”しかし、この方(イエス・キリスト)を受け容れた人々、すなわちその名を信じた人々には、神の子どもとなる特権をお与えになった。この人々は、血によってではなく、肉の望むところでも人の意志によってでもなく、ただ、神によって生まれたのです。”(ヨハネの福音書1:12,13)