第12回 「聖書入門ーキーワードで読む」

第十二回  仲介者、μεαίτης,メシテ―ス,mediator)

「仲介者」というギリシャ語である「メシテ―ス」は、新約聖書で6回用いられています。「中間に立ち、両者を結び合わせる人」という意味です。「新約聖書ギリシャ語小辞典」では、「間に立って執成す者」とあります。一般的には、調停者、仲裁人、仲保者、保証人という意味で用いられます。この仲介者を三つの観点から考えて見たいと思います。

 「新しい契約の仲介者」

 神が、人間に対して立てられるのが「契約」です。聖書は、モーセが古い契約である律法の仲介者であったのに対し、イエス・キリストが「新しい契約」の仲介者であると語っています。契約を与えられる方は、神です。契約を受けるのは、人間です。そしてこの契約が実現する、つまり効力を持つためには、仲介者であるイエス・キリストの十字架の犠牲が必要です。
へブル書は、十字架で罪の贖いをなしてくださったイエス・キリストが、「新しい契約の仲介者」(へブル9;15)であると言われています。 
「キリストは新しい契約の仲介者(メシテ―ス)です。それは初めの契約の時の違反から贖いだすための死が実現して、召された者たちが、約束された永遠の資産を受け継ぐためです。」(へブル9:15)
初めの契約、古い契約は、律法です。しかし律法は、人間を罪に定めますが、救い出すことはできません。人を罪から解放し、永遠のいのちを与える新しい契約は、イエス・キリストが死に、十字架で血が流されることで、実現します。イエスが十字架で人間の罪を負って十字架にかけられるというイエスの仲介が、契新しい契約の実現において重要です。

「仲介者の意味―仲裁者、ないし調停者」

仲介者の意味は、双方の対立を和解する仲裁者という意味もあります。旧約聖書の七十人訳聖書では、9章33節に、「私たち二人の上に手を置く仲裁者(メシテ―ス)が私たちの間にはいません。」と記されています。仲裁は、敵同士を仲裁して友にすることです。人間間の場合に、敵対する双方に原因があり、喧嘩両成敗ということもありますが。神と人との関係においては、対立の原因は神ではなく、人間の罪にあります。
 「見よ、主の手が短くて救えないのではない。その耳が遠くて聞こえないのではない。むしろ、あなたがたの咎が、あなたがたとあなたがたの神との仕切りとなり、 聞いてくださらないようにしたのだ。」(イザヤ59:1ー2)
 罪の問題が解決されないと、神と人との正しい関係は回復されませんが、仲裁者イエスによって罪の赦しがなされ、隔ての壁が打ち壊されます。仲介者に必要な条件は、神の事を知ると同時に、人間の苦悩や悲惨をも知り、あわれみを注ぐ人です。仲介者としてふさわしいお方は、100%神であり、また100%人間であるお方だけであり、それは、人としてこの地上にこられ、罪の贖いをなしとげられたイエス・キリストです。聖書は次のように語っています。
「神は、すべての人が救われて、真理を知るようになることを望んでおられます。神は唯一です。神と人の仲介者も唯一であり、それは人としてのキリスト・イエスです。キリストはすべての人の贖いの代価として、ご自分を与えてくださいました。これは、定められた時に、なされた証です。」(Ⅰテモテ2;5)

「仲介者の別の意味―保証人」

メシテ―スは、「保証人」という意味もあります。負債を保証するのが、メシテ―スです。銀行でお金を借りる時に、本人が返済できない時に、負債を本人に代わって支払うのが保証人です。今日の連帯保証人のようなものです。人間の世界では、連帯保証人になったばかりに、家屋敷を抵当に入れられるという悲劇が再三起こっています。しかしイエスは、自ら私たちの罪の負債をすべて、十字架の死によって、清算してくださった連帯保証人です。自分でどんなり努力しても罪という負債を返済できませんでしたが、代わってイエス・キリストがすべての負債を支払ってくださったのです。聖書は、「私たちに不利な、様々な規定で私たちを責め立てている債務証書を無効にし、それを十字架に釘づけ」して取り除いてくださいました。」(コロサイ2:14)と語っています。
 皆さんは、イエスが十字架で語られた七つのことばを御存知でしょうか。そのうちの一つが債務の清算という意味をもっています。聖句を紹介しましょう。
 「イエスは酸いぶどう酒を受けると、「完了した」と言われた。そして頭を垂れて霊をお渡しになった。」(ヨハネの福音書19;30)
この「完了した」というギリシャ語が、「τετελέσται、 テテレスタイ」ですが、罪の負債を「完済した」という意味でもあります。

以上私たちは「仲裁者」(メシテ―ス)の意味を、新しい契約の仲介者、対立する者の仲裁者、罪という負債をかわって清算された保証人という三つの視点から考えました。「仲介者」は、神と人の和解をなしとげてくださったお方です。この方を通して私たちは、創造者である生ける神に帰ることができます。

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