
5月の福音集会
毎週日曜 14時〜15時
● 5/4 (日)
「人はどこから来て、どこに行くのか」
● 5/11 (日)「天国行きのパスポート」
● 5/18 (日)「人生のコペルニクス的転回」
● 5/25 (日)「炎のランナー」14時〜
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聖書よりキリストの愛と救いをお知らせする大津キリスト集会(教会)
子供たちに愛され、読まれている童話の一つにC ・S・ルイスが書いた『ナルニア国物語』(全7巻)があります。日本でもこのシリーズは、多くの出版社によって訳されて、親しまれています。それでは、著者のC・S ・ルイスはどのような人物で、なぜ『ナルニア国物語』を書いたのでしょうか。
「ルイスのプロフィール」
C.S.ルイスは、1889年1月29日にアイルランドのベルファストで生まれ、1963年にオックスフォードで亡くなっています。彼は悲しみの人でした。彼の人生の最初の危機は、9歳の時に母フローラが癌で亡くなったことです。次に彼は第一次戦争で戦い、塹壕戦で苦しみと破壊を経験し、重度の心的外傷を患ったうえ、親友のバデイ・ムーアを戦争で失くすという経験をします。また1956 年に結婚したジョイ、デビッドマンを4年後に乳癌で失っています。
ルイスは、自らの苦しみの経験を振り返って、『痛みの問題』(1940) において、苦しみは、私たちの存在の頼りなさを痛切に感じさせ、キリストとの出会いに導くと述べています。ルイスは若い頃は徹底した無神論者でしたが、父の死を契機として、1931年にキリスト信仰を持つに至ります。彼の回心の軌跡は、自叙伝『喜びの訪れ』(1955年)に記されてあります。彼のキリスト信仰が表明された最も重要な書物は、『キリスト教の精髄』(1952年)です。しかし、それと共に、ファンタジー小説『ナルニア国物語』中にも彼のキリスト信仰が生き生きとあらわれています。
「ライオンと魔女」
このシリーズは、1950~56年に書かれていて、最初に書かれたものが『ライオンと魔女』(1950年)、最後の書物が『最後の戦い』(1956年)でした。『ライオンと魔女』は、アスランに象徴されるイエスの出現を示し 『最後の戦い』では、古い秩序の終わりと新しい創造の到来が描かれています。読者は、「ナルニア王国」シリーズを通して、神の創造、人間の堕落、キリストによる救い、終末の到来という壮大な歴史哲学を知ると同時に、信仰の喜びに目が開かれるでしょう。ここでは最も有名で。映画化もされた『ライオンと魔女』に限定をして、その内容を紹介します。
「衣装ダンスから別世界のナルニア国へ」
ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシーというペペンシー家の4人の子どもは、第2次戦争の難を避けるために、ある老教授の屋敷に疎開しています。その屋敷にある衣装ダンスを通って全く別世界のナルニア王国に入ります。このナルニア国は、魔女が支配する国で、魔女が魔法をかけているので、春がなく、雪の降る寒い冬しか存在しません。楽しいクリスマスもありません。実は、魔女の支配に反対するものは、魔法によって石像にされてしまいます。そこでは、専制的な魔女の恐怖支配が行われています。魔女は骨の髄まで悪魔なのです。しかし、少数ですが良心の故に魔女の支配に服従することを潔しとしないものたちもいます。
最初にナルニヤ国に足を踏み入れたのは、心優しく、正義感の強い末っ子のルーシーでした。ルーシーは、衣装ケースを出て、ナルニヤの夜の森に入っていき、そこでフォーンのタムナスに遭遇します。フォーンは腰から上は人間の姿ですが下はヤギの姿をした半人半獣で、首に赤いマフラーを巻いてます。タムナスは「イヴの娘」ルーシーを歓迎し、美味しい食事を振る舞いますが、実は魔女に命令されて、ルーシーを眠らせて連れてくるようにとの命令を受けていました。しかしタムナスは自分がしようとしていることを涙を流して悔い改め、命令に従わず、ルーシーを帰してしまいます。後にそのことが魔女に知られて、魔女の館で大逆罪と人間と親しくしたという罪で石像にされてしまいます。
次に衣装ダンスを通って、ナルニア国に来たのは、末っ子のエドマンドです。エドマンドは利己的で自分のことしか考えず、よく兄弟たちと喧嘩をする嫌われ者でした。彼がナルニア国で最初に出会ったのは、なんと女王として君臨する魔女でした。
魔女は、ドワーフ(人間よりも背丈が小さい伝説上の種族)がトナカイに引かせるそりに乗っています。魔女は、「白い毛皮のマントに身を包み、右手に長い真直ぐな金色のつえを持ち、頭に金色の王冠をかぶっている」尊大で冷酷な悪魔です。魔女は、エドマンドを「アダムの息子」と呼び、ターキシュ、デライト」(白い粉のついたトルコのお菓子)を与えて、自分の虜にしてしまいます。魔女は、兄弟全員を連れてくれば、王子にし てあげるとエドマンドを誘惑します。 エドマンドは、 食べ物や権力の誘惑に弱いのです。魔女はそこにつけ込んできます。
「 アスランとは何者? 」
ルーシーやエドモンドが教授の館に帰ってからしばらくして、次にピーター、スーザン、エドモンド、ルーシーの4人が衣装タンスを通ってナルニア国にやってきます。 4人は、真っ赤な胸、目がぱっちりしたコマドリたちに導かれ、魔女に反発しているビーバーと出会います。ビーバーは、昼食をふるまった後に、魔女を滅ぼすアスランが来ることを喜びつつ語ります。「アスランは何者だ」という子供たちの問いにビーバーが答えます。
「知らないんですか?アスランは王です!この森の創造主です!でも、めったにおい
でにならないんですよ。—–しかし、アスランが戻ってこられたという知らせが
届きました。いまこの時ナルニヤにおられます。アスランが白い魔女をやっつけ
てくれるでしょう。タムナスさんを救うのは、あなたがたではなく、アスランで
す。—–アスランが来れば、悪が滅び、アスランがほえれば哀しみは癒えます。」
「アスランは人間ですか?」というルーシーの問いにビーバーは。「とんでもない。アスランは森の王であり、大海のご子息です。」と答えます。アスランは、「金色のたてがみと大きく気高で厳しく圧倒的な目」を持つライオンとして描かれ、聖書で「ユダ族から出た獅子」(ヨハネの黙示録5:5)と言われているキリストを象徴しています。
「アスランー犠牲の死」
しかし魔女に心をつかまれていたエドマンドは、裏切り、魔女の館にかけつけ、三人の兄弟を連れてきたこと、またアスランが来ることを魔女に告げます。それを聞いた魔女は怒り、エドマンドを人質にし木に縛り付け、殺害しようとします。魔女が最も恐れているのがアスランの到来だからです。
魔女が、今にもナイフでエドマンドを殺害しようとした時、ピーターやアスランの救出部隊が来て、魔女からエドマンドを取り戻します。しかし魔女はナルニア国の大帝が定めた「いにしえの魔法の原則」を持ち出し、裏切り者に対する血の権利を要求します。アスランもこの原則を尊重しなければなりません。そこで、アスランは魔女と話し合い、「いにしえよりも古い魔法の原則」に基づき、エドマンドを救出しようとします。つまり、魔女はエドモンドの血を要求する権利を放棄する代わりに、アスランが代わりに死ぬという契約です。こうして、アスランは無抵抗で捕まえられ、立派なたてがみが刈り取られ、口輪をかけられ、石の上に縛り付けられ、殺されてしまいます。魔女はアスランに、「聞け、ナルニヤは永久にわが手に落ちた。お前は自らの命を失い、しかも、あのこわっぱの命も救えない。それを思い知れ、そして絶望で死ね」と自らの勝利に酔いしれるのです。
スーザンやルーシー は、アスランの処刑を目撃し、悲しみや悔しさ、恐ろしさで頭が一杯になります。ルーシーは、死んだアスランの所に行き、口づけをします。彼女は心からアスランを愛していました。このアスランの犠牲の死によって、裏切り者のエドマンドが救われたのです。裏切りものの代わりに生贄として捧げられたのがアスランでした。それ以降エドマンドは自分の罪を悔い改め、アスランの側につき、魔女の勢力と戦うようになります。
「アスランのよみがえり」
しかし、一度死んだアスランは甦ります。そしてピーターたちと一緒に魔女と闘い、勝利します。魔女の魔法によって石像とされたものたちにアスランが息を吐きかけると死んだものは生き返り、魔女の館の中庭は動物園のようになります。そしてアスランは、ケア・パラヴェル城の大広間で四人に戴冠し王座に座らせます。それは、「アダムの肉とアダムの骨が、ケア・パラヴェルの王座につく時、悪しき時代は終わりを告げる」という古い預言の成就でした。
「アスランーイエス・キリスト」
冬を春に、死をいのちに、悲しみを喜びに、悪の支配を善の支配に変えることのできる存在こそ、アスランであり、アスランに象徴されたイエス・キリストです。イエス・キリストは神に背を向けた私たち一人ひとりのために十字架で死んでくださり、罪の赦しの道を開かれました。しかし三日目に墓を打ち破ってよみがえられ、この地上の支配者である悪魔に勝利されたお方です。まさにこのことこそ、ルイスが「ライオンと魔女」で語りたかったことでした。
参考文献
C.S.ルイス『ナルニア国物語(2)-ライオンと魔女と衣装ダンス』(光文社文庫、2016年)
C.S.ルイス『喜びの訪れーC・S・ルイス自叙伝』(冨山房百科文庫、1977年)
DVD 『ナルニア王国-ライオンと魔女』(日本語字幕付き)