第36回 いのち(ϛωή、life,ゾーエ)

第36回 いのち(ϛωή、life,ゾーエ)

ゾーエは、生けるもの、いのちの原動力を示しています。動詞形はゼーン、生き物はゾーオンです。このことばは新約聖書中135回使用されています。
「ギリシャ語小辞典」では、二つの意味が記されてあり、第一は、神の息が働いている肉的・地上的生命を指し、第二に霊的・天的いのち、すなわち復活されたキリストを通して、いのちの源泉である神から与えられるいのち、つまり永遠のいのちを意味しています。

「永遠のいのち」

ゾーエが使われている最も大事な事例が「永遠のいのち(アイオーニオス ゾーエ)です。この言葉は42回使用されており、いのちの31%が永遠のいのちとして使用されています。中でもヨハネが最も多く使用しており23回、パウロは、書簡で9回用いています。聖書は、幸いなことにイエスを信じるものに永遠のいのちが与えられことを約束しています。
“神は、実に、そのひとり子をお与えなったほどに世を愛された。それは御子を信じる者が、一人として滅びることなく、永遠の命を持つためである。“(ヨハネの福音書3:16)
“ 御子を信じるものは永遠のいのちを持っているが、御子に聞きしたがわない者はいのちを見ることがなく、神の怒りがその上にとどまる。“(ヨハネの福音書3:36)
「永遠のいのち」は、永遠に続くいのちという意味以上に、質的に新しい神のいのち、キリストのいのちを指しています。したがって、イエスを信じることは、キリストのいのちに生かされることを意味しています。
イエスご自身が、「わたしが道であり、真理であり、いのちです」(ヨハネ14:6)
と語られました。このいのちのギリシャ語がゾーエで定冠詞がつき大文字で表記されています。

「ビオス(βίοϛ、bios)との相違点」

ギリシャ語ではいのちを示すもうひとつのbios という言葉があります。「ギリシャ語小辞典」においては、ゾーエが、「いのちそのもの、生命原理、生命エネルギー、生かす原動力」を指すのに対して、ビオスは、「生命の存続期間、生命を支える手段を指すと記されています。例えばルカの福音書15章では放蕩息子がでてきますが、彼は父親から生前贈与をしてもらい、「放蕩して、財産を湯水のように使ってしまった」(ルカ15:13)のですが、その「財産」を表示するギリシャ語がビオスです。 またビオスは生活態度という意味でも用いられています。たとえばパウロは、「いつも敬虔で品位を保ち、平安で落ち着いた生活を送る」(1テモテ2:2)ように勧めていますが、この「生活」がギリシャ語のビオスの訳です。
総じてゾーエは生命の原動力ですが、その原動力はキリストのいのちであり、クリスチャンは自分の力ではなく、キリストのいのちによって生かされているものです。

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