第1回 神(אֱלֹהִ֔ים、エロヒーム)、ヤハウェ(יְהוָ֞הYHWH)
第1回 神(אֱלֹהִ֔ים、エロヒーム)、ヤハウェ(יְהוָ֞הYHWH)
<三位一体のエロヒーム>
66巻の書物で構成されている聖書は、創世記1章1節「はじめに神が天と地を創造された。」という有名な聖句から始まります。ここで登場する「神」は、多くの日本人がイメージするような八百万の神ではありません。聖書が語る神は、すべてのものを創造された唯一の神(出エジプト6:4)です。原語のヘブル語は「אֱלֹהִ֔ים」(エロヒーム)」であり、旧約聖書の中で実に2500回以上も登場します。「エロヒーム」は「神」を意味する「エロアー」の複数形ですが、聖書が語る神が複数存在するというわけではありません。神は唯一ですが、「父、子(イエス・キリスト)、聖霊」の三つの位格を有しているので、「エロヒーム」という複数形が用いられているのです。この重要な真理は、「三位一体(さんみいったい)」と呼ばれています。三位一体を私たち人間の限られた理性で完全に理解することはできませんが、聖書は全体を通してこの重要な真理を語っています。例えば、創世記1章26節には、「神(エロヒーム)は仰せられた。さあ、人をわれわれのかたちとして、われわれの似姿に造ろう。」と記されていますが、この聖句も神が三位一体であることを認めなければ理解することができないでしょう。
<神の御名であるYHWH>
「エロヒーム」や「エロアー」は、「神」を表す一般名詞ですから、偶像の神々を指す言葉として用いられることもあります。これに対し、旧約聖書で神を表す単語として最も多く登場するヤハウェ「יְהוָ֞ה」は、唯一の神の御名であり、固有名詞です。ですから、偶像の神々にヤハウェ「יְהוָ֞ה」という言葉が用いられることはありません。神の御名の子音をアルファベットで表すと「YHWH」になりますが、この四文字はギリシャ語でテトラグラマトンと呼ばれています。
この神の御名、実は正しい発音の仕方が今でも分かっていません。ヘブル語の文字には子音しかなく、母音がないので、へブル語の文字を見るだけでは正しい発音が分かりませんし、ユダヤ人は「神の御名をみだりに口にしてはならない」という有名な十戒の一つを厳格に守るため、ヤハウェ「יְהוָ֞ה」をそのまま発音せず、「アドナイ(主)」や「ハシェム(御名)」と発音してきたため、正しい発音が分からなくなってしまったからです(もっとも、様々な研究結果によると、「ヤハウェ」や「ヤーウェ」などと発音されていたのではないかと推測されています。)。
<何ものにも依存されない神>
では、この神の御名「YHWH」には、どのような意味があるのでしょうか?そのヒントは、出エジプト記3章に記されています。神は、モーセから神の御名を尋ねられると、「わたしは、『わたしはある(エヒィエー)』という者である。」と答えられました(出エジプト3:14)。「わたしはある」というのは何とも不思議な名前ですが、これを英語で表すと「I am」であり、「わたしは存在している」ということを意味しています。神は、何ものにも依存せず、神ご自身だけで存在される唯一の存在です。神は、空気、水や食料はもちろん、地球や宇宙さえも必要とされません。神は、あらゆるものが存在しなくなったとしても、変わらずに存在され続けるのです。そのような存在は神以外にはあり得ません。神は、そのような唯一無二の存在であることを「エヒィエー」という言葉で示されました。この「エヒィエー」の子音をアルファベットで表すと「HYH」になりますが、その全ての子音が「YHWH」に含まれています。「YHWH」には、神がこのような存在であるという重要な意味が込められているのです。
<契約に忠実な神>
神は、「エヒィエー」が神の御名であると答えられた後、続けて「あなたがたの父祖の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神、YHWH」が永遠の神の御名であるとも仰せられました(出エジプト3:15)。アブラハム、イサク、ヤコブは、創世記に登場するユダヤ人の先祖です。神は、アブラハムの子孫を海辺の砂のように増やし、すべての人々がアブラハムによって祝福されることなど、多くの祝福をアブラハムに約束されました。この約束はアブラハム契約と呼ばれ、アブラハムの子イサク、イサクの子ヤコブ、そしてヤコブの子であるイスラエル民族(現在のユダヤ人)に受け継がれています。唯一の神は、アブラハム契約を結ばれた神であり、忠実にアブラハム契約を守られる。「アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神」という表現には、このような意味が込められています。神は、人間と結ばれた契約を忠実に守られます。神は全能であり、契約を破られることは決してありません。「YHWH」とは、「アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神」である神が永遠に契約に忠実であることを示す御名でもあるのです。
(文責:竹内大明)

